殺伐とした現代だからこそ重要、
禅の教えに基づく人間教育

 
 

 鶴見女子中学・高校の校長に就任して、そろそろ一年ですね。先生には中・高・大の連携強化の一環として、大学から中学・高校へ行っていただいたわけですが、もう慣れましたか。
 ええ、やっと。でも、正直言って、この一年はなかなか大変でした。大学も中学・高校も同じ総持学園ですから、大差はないだろうと考えていたのですが、宗教教育の取り組みや先生方の業務の多さ、質・量ともに大違いでした。
 いろいろご苦労なさったんですね。
 でも、何も知らなかったことで、かえって見ることや聞くことが新鮮で、とても勉強になりました。それに中学・高校の素晴らしい点をたくさん発見できました。
例えば、その一つが禅の教えに基づく人間教育です。毎日の朝礼、黙念、読経、聖歌などが学校生活の中に浸透していて、生徒もごく自然に受け入れています。
そのため、普段はにぎやかな生徒達ですが、宗教行事では立ち居振る舞いがとても美しい。これには驚きました。
また、1月の大寒の頃の早朝に、4日間にわたって行われる「耐寒参禅会」も、自由参加なのに毎年、9割近い生徒が参加します。これもすごいですよね。
 大学の方にも、新入生を対象にした「一泊参禅会」がありますが、今のお話を伺うと、中学・高校の意欲的な取り組みには、とてもかないませんね(笑)。
 一時、「宗教色はあまり出さない方が…」という意見もありましたが、中学生が般若心経をそらんじていたり、正座、合掌や焼香の仕方がきちんと身に付いているの見ると、「いいなぁ」って思うんです。
 建学の精神である「大覚円成、報恩行持」に裏づけられた人間教育は、総持学園の一番の特色ですからね。
最近は世の中が殺伐として、人の心が荒廃している気がしてなりません。そんな時代だからこそ、豊かな心の育成をめざす人間教育は、ますます重要になっていると思うんです。
その意味で、本学の大学生や中学・高校生は素晴らしい宝物を手にしているわけですよ。
 本当にその通りですね。

 
 

4月から中学・高校が大学の附属に、
相互交流を強めて魅力ある学園へ

 
 

 ところで、この4月から中学・高校が大学の附属になり、校名が「鶴見大学附属鶴見女子中学校・高等学校」に変わります。
総持学園は、もともと女学校としてスタートし、鶴見大学は後から設立されました。その意味では、中学・高校が“本家”で、大学の方は“分家”のような間柄です。
そのため、附属化の話はかなり以前からあったのですが、「分家が本家を支配する」ように受け取られ、なかなか話が前へ進みませんでした。
そこで、大学と中学・高校間の意思の疎通をスムーズにし、双方の連携を強化する架け橋として、伊藤先生に大学から中学・高校へ赴任していただいたわけです。先生のご尽力もあって、附属化という永年の懸案がやっと解決しました。本当にご苦労さまでした。
 いえ、私はできることをしてきただけですが、少子化の影響は、大学だけでなく中学・高校にも押し寄せています。
この厳しい時代を乗り切るには、大学と中学・高校が一体となって難局に立ち向かわなければならない。こういう現実を、大学、中学・高校双方の皆さんが真剣に受け止めてくださったことが、懸案解決の大きな力になったと思うんです。
 附属化で、総持学園は新しい歴史へ向けて、大きな一歩を踏み出したわけです。
これからは人事や授業、施設利用などの面で、大学と中学・高校の相互交流を積極的に進めないといけませんね。
 19年度は高校から2人の教諭が短大部に異動します。また、3人が非常勤講師として、文学部の日本文学科、文化財学科、ドキュメンテーション学科で教えることになっています。
 大学の方からも、中学・高校へどんどん教員を派遣したいですね。例えば、大学の外国人教員に中学・高校でネイティブな英語を教えてもらう。そんな交流もいいと思うんですよ。
 中学・高校は英語に大変力を入れており、授業時間数は公立校の2.5倍です。
そういう交流が実現すれば、生徒の英語力アップは間違いないでしょう。
それから大学の推薦入試は早いので、10月には進路が決まる生徒がいます。その子たちが卒業まで大学や短大部の授業に参加させてもらい、先取り学習をする。そんな形の交流もできれば素晴らしいな、と思うんです。
 施設の相互利用も大いに進めたいですね。例えば、中学・高校には立派な講堂があります。大学の入学式や卒業式などをそこでやってもいいかな、と考えています。
 中学・高校の生徒たちは、ビデオやCD、DVDがそろっている大学の図書館、それにメニューが豊富な学生食堂などを利用したがっているようです。
また、高校には看護・医療進学コースがありますが、介護などの実習施設がありません。大学の4号館にある施設を利用させていただけると本当に助かります。
 サークル活動や大学祭など行事面での交流も活発にしたいですよね。高校には、かなり熱心に野球をやっていた先生がいるそうですね。神奈川大学野球リーグの1部昇格を果たして頑張っている硬式野球部のサポートをしてもらえれば、実にありがたい。
 中学・高校側から言えば、部活の顧問の先生方がとても大変なんです。特に体育系の場合は、対外試合の引率などで、土日も休めません。
そこで大学の学生さんに、何らかの形で手伝っていただけると助かるんですけどね。
 体育施設の面では現在、獅子ケ谷の総合グラウンドを大幅に改修中です。これが完成すれば、硬式野球用の立派な球場をはじめ、各種スポーツ施設が整います。これを機に、大学と中学・高校のスポーツ交流がもっと盛んになって欲しいですね。
それと話は違いますが、附属化で大事なことを一つ忘れていました。附属高校から鶴見大学へ進学する場合の優遇策です。
たとえば入学金を安くするなどの入学時の特典を設けないと、附属校になったことの魅力やメリットが薄れかねません。優遇措置は緊急の検討課題と言ってよいでしょう。
 そうですよね。優秀な生徒を一人でも多く鶴見大学に送り出すために、高校側としても、ぜひお願いします。

 
 

2年後には中学・高校が男女共学に完全移行、
今夏から新校舎の建設にも着手

 
 

 さて、今回の附属化を皮切りに、中学・高校の方ではこの先も新しい改革が目白押しです。将来展望ということで、その辺のお話も伺えませんか。
 附属化に続き、平成20年度からは中学全面、高校の特進コースが男女共学になります。
さらに、翌21年度からは高校が全コース男女共学になり、80年以上続いてきた女子校の歴史に、完全に終止符が打たれます。
 ちょっと寂しい気もしますが、これも時代の流れでしょうか。
 ええ、それは中学・高校の生徒募集活動で、外部の進学フェアなどに参加すると、はっきり感じます。
一部の有名女子校は別にして、女子校のブースは立ち寄る人も少なく、閑散としているのに、男女共学校のブースは大変な人気で、大にぎわいです。その光景を目の当たりにすると、「男女共学志向はここまで進んでいるのか」と驚きを禁じ得ません。
女子校の看板を売り物に、一貫して心豊かで、明晰・活発な女子の育成に力を注いできた中学・高校としては、男女共学に移行することに一抹の寂しさも感じますが、その半面で、新たな出発に大きな期待も寄せています。
 そうですよね。過去を振り返るより、しっかりと明日を見つめて歩んでいくことが大切ですからね。それと中学・高校には、新校舎の建設という大事業もあります。着工はいつですか。
 この夏です。そして、男女共学に完全移行する平成21年の春までには完成の予定です。
新校舎には、従来の音楽室や美術室、理科室といったもの以外にも、国語や英語、数学、社会など全教科に専用教室ができます。
校舎が完成した暁には、これらの教室を活用して、教科教育に力を入れ、学力アップにつなげていきたいと考えています。
 それはいいですね。

 
   
 

大学も特色を生かしたオンリーワン教育や
キャリア教育に全力

 
 

 柳澤先生、大学の将来展望も聞かせていただけませんか。
 大学の方は、学部や学科の新設・廃止が一段落しますから、今後しばらくは内容の充実に全力を注ぐつもりです。
同時に、厳しい時代を生き抜くために、鶴見大学ならではの特色づくりと、それを生かしたオンリーワン教育の実践、さらにはキャリア教育などの一層の充実にも取り組まなけばなりません。
また、私の見るところ、鶴見大学には文学部や歯学部など学部間、あるいは学科間にも高い垣根があり、相互交流が少ない気がします。同じキャンパス内にあるわけですから、この垣根を取り払い、開放的な大学に変えていくことが急務の課題と考えています。
 その思いは私も同じです。大学も中学・高校も、もっと教員一人ひとりの意識改革が必要ですよね。
 その通りです。附属化という永年の懸案が解決し、総持学園が新しいスタートを切ったわけですから、われわれ教員も絶えず自己変革に努めながら、魅力ある学園づくりに邁進しなければなりません。
伊藤先生、学園の新しい時代を築くために、みんなで手を携えて前進していきましょう。

 
   

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