受講者数、講座数が10倍に

 
 

 生涯学習センターが今年度で10周年を迎えた。この10年間の歩みや魅力について、柳澤慧二学長にお話を伺った。
 「最初に生涯学習セミナーが始まったのは、鶴見大学会館をいかに有効利用するかという議論からでした。大学が持っている知的財産をどのように地域社会に還元するかという点からも、生涯学習セミナーという形で鶴見大学会館を利用するのが適切なのではないかということになり、平成9年夏にプレセミナーとして5講座で無料開講しました。このときは手探りの状態でしたが、思いのほか好評だったため、秋からは本格的に有料での開講となりました。グラフのとおり、初年度は2クールで9講座、受講者数は246人でしたが、昨年度までの10年で講座数、受講者数ともに約10倍に増えました。受講者の皆様の支えはもちろん、先生方、運営委員の方々等の努力により、本年度もこの数字はさらに伸びております」
 これほどの人気の生涯学習セミナーだが、その秘密と魅力はどこにあるのだろう。
 「まず、本学ならではのユニークな講座がたくさんあるということが挙げられると思います。本学は曹洞宗の大本山總持寺が設立した大学ですが、生涯学習セミナーにもその特色が大いに活かされています。この秋の講座だけ見ても、『宗教と生きがい』というカテゴリーで5講座が開講されています。また、本学は短大国文科から始まりました。その伝統は文学部へと受け継がれており、文学と関わってきた歴史の長さがあります。それによる研究の蓄積、教員の経験など、特に日本の古典文学の講座に本学の特徴が大いに反映されています。さらには、本学には文化財学科という他大学にはあまり見られない特徴的な学科があります。ここには古都鎌倉に縁のある先生方が集まっており、教室での講義にとどまらず、実際に鎌倉を歩いて実物の文化財を見ながら学べるなど、とてもユニークな講座があります。その延長とも言えますが、鎌倉だけでなく、「文化財スタディ・ツアー」と題した史跡を巡る旅行などもあります。他にも、歯に関する講座や子育てに関する講座、パソコンに関する講座なども本学の特徴を活かしたものと言えましょう。もちろん、これ以外にも語学やヨガ、色彩や音楽、ダンス、能楽、歌舞伎など趣味に関する講座や資格取得を目指す講座などなど、文字どおりバラエティに富んだ講座構成になっていることが人気の秘密と言えるのではないでしょうか」(柳澤学長)

 
 

 
 

知的好奇心を満たし実用にも役立つ充実のラインナップ

 
 

 ここで、講座を担当されている先生方にお話を伺ってみよう。まずは『源氏物語への誘い』を担当されている今野鈴代先生に講座の内容や教室の雰囲気、受講者の様子などを聞いてみた。
 「今年で6年目、年に2クールありますので12回目になります。教室はなごやかかつ真剣な雰囲気で、この講座の特色でもある原文の音読にもご熱心で、とても楽しそうに取組んでおいでです。年齢層はやや高めで、80歳を超えた方もいらっしゃいました。さらに特徴的なのは、継続受講される方が多いことです。読み進めてゆく源氏物語の魅力は言うまでもなく、この物語を通して関心が広がってゆくのが楽しいと言われます。若い頃に学びたくても戦争などで学ぶ機会に恵まれなかったという方もいらっしゃいます。そういう方は知的好奇心が旺盛ですね。ご年配の方も多いので周辺知識に詳しい方もおいでで、私の方が勉強になることもあります。『源氏物語』を、光源氏を巡る恋愛小説としか捉えない方もいらっしゃるようですが、そういう方にはぜひ原文をお読みいただきたいですね。人生、人間が深く豊かに描かれていることに気づくと思います。千年前の人々も私たちと同じように喜び、哀しみ、愛し、悩み、懸命に生きていたことがわかると思います」
 次に、『“自分らしさ”のコミュニケーション・レッスン』『わが子を守り、心を育てるために』『2,3歳児向け「リトミック・工作講座」』といった人間関係づくりに関する講座を担当されている松本啓子先生にお話を伺った。
 「私の講座は対人関係の講座ですが、幼児と親との関係、小中高生と親との関係、一般社会での関係と、対象別に開講されています。最近は子どもとの接し方がわからないという悩みが増えています。家庭における子どもの心を育てる機能が低下しつつあるのですが、そのために育児や人間関係のストレスを感じる人も多いようです。自分たちだけが悪いのではなく、家庭力の低下は社会全体の問題だということ、そしてその対処法があるということを多くのお母さん、お父さんに知ってほしいと思います。その延長線上にあるのが一般向けのコミュニケーション・レッスンです。ここには職場の人間関係の悩みを現在お持ちの方や教養を深めたい方が参加されています。20代から60代までと年齢層も幅広いのですが、異世代交流にもなり、とても充実した講座になりました。今野先生は『源氏物語』を通して千年も変わらない人間関係を教えていらっしゃいますが、私はこの数年でも大きく変わる人間関係を取り上げており、とても対照的ですが、本質の部分では共通しているのではないかと思います」

 
 

 

好評の文化財スタディ・ツアー(賤ヶ岳古戦場で)

 
 

学生時代に戻った気持ちで参加しています。

菅原通元さん(横浜市港南区在住)

 
 

 歴史や美術などに興味があったので、2年前に会社をリタイアしたのを機に生涯学習セミナーを受講しました。雰囲気はとてもよくて、深く勉強している受講者も多いようです。私よりもはるかに高齢とお見受けする女性が熱心に勉強されている姿を見て、たいへん勇気付けられました。学びたいという欲求の幅がどんどん広がるバラエティに富んだ講座と個性的で魅力的な先生方ばかりなので、学生時代に戻ったような気持ちでいつも新鮮に楽しく参加させてもらっています。
 ほかに「文楽」とか、以前あった「漢詩」、さらには「論語」などの講座があったら受けてみたいですね。

 
     
 

人気の秘密とは

 
 

 先生方は生涯学習セミナーの人気の秘密についてどのようにお考えなのだろうか。
 「ソフト面とハード面の両方が充実しているところは大きな要因だと思います。駅から近いのも魅力ですし、受講者が大学図書館の本を借りられるなど、制度の面も充実しています。さらにはスタッフの方々のご努力も大きく、そうした心遣いを受講者のみなさんはきちんと受取っていらっしゃいます。今後はリタイアされた男性の受講者も増えるでしょうから、その人たち向けにもさらに独自色の強い講座が加わるとよろしいですね」(今野先生)。
 「スタッフの方々は私たちにもやさしいんですよ。私が病気をしたときにも『先生の体を一番に考えてください』と言ってくださったり。子育て講座のとき、下のお子さんのお世話をしながらだと大変なのですが、預かり保育があるので喜ばれています。また、受講料があまり高くない点も魅力だと思います。本当に必要としている人が受講しやすい価格なんです。今後も社会の変化やニーズに応える講座を開講して、より一層きめ細かい対応を続けていただきたいと思います」(松本先生)。

 
 

大本山總持寺での坐禅

 
     
 

在学生への受講支援も充実

 
 

 生涯学習セミナーというと、学外の人向けと思っている人もいるかもしれないが、実は学生にも受講できる講座がたくさん開講されている。さらに、資格取得、語学、パソコン関連などスキルアップ目的の講座については、本学学生の受講支援の制度があり、本学父母会から受講料の一部が補助される。
 大学の授業とは別に興味をもったものや、将来役立つ資格の取得を目指してぜひ利用してみよう。
 受講支援対象の講座のうち、韓国語会話の講座もある。大学の授業には韓国語の授業はないのだが、韓国には本学と姉妹校協定を結ぶ壇国大学校や、学術交流の協定を結ぶ韓国外国語大学校があるので、ぜひ多くの学生に興味を持って学んでほしい。
 さて、10周年をひとつの節目として、今後はどのような展開をしていくのだろうか。ノ澤生涯学習運営委員長に再度、伺ってみよう。
 「文部科学省でこうした生涯学習セミナーを単位制にという動きもあるようです。ただ、これはまだまだどうなるかわからない話ですので、現時点では現状の“出会いの広場”としての役割を継続していきたいと考えています。近隣の人たちが触れ合う場所として大学を利用してもらえたらうれしいです。もともと社会貢献というところから始まっていますから、多くの人に大学で学びたいという知の欲求を満たしていただき、たくさんの友人、仲間を作ってもらえたらと思います。また、会社をリタイアされた方や子育てを終わられた方々に、社会との接点や学ぶ楽しさを提供できたらと思います。単位という話はその先にあるものかもしれません」
 生涯学習セミナーは今後も”出会いの広場”として鶴見大学独自のユニークな講座を提供していく。

 
 

生涯学習センター
開設10周年によせて

ブリキのおもちゃ博物館館長
北原照久

 生涯学習センター開設10周年おめでとうございます。9月8日、記念講演として「夢の実現 ツキの10カ条」と題して、受講者の皆さんにお話をさせていただきました。どちらかと言えばご高齢の方たちが、さまざまなテーマに興味を持ち、自分なりに学び続けていらっしゃるというのはすばらしいことです。皆さんの表情が生き生きとしているのを拝見して、私も、これからも何事にも関心を持ち、そして感動していきたいとの思いを新たにしました。

 

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