来年、開院40周年を迎える鶴見大学歯学部附属病院。
多くの専門外来を開設し、高度な歯科医療と教育・研究に力を注ぐ一方、
開業歯科医との病診連携の推進など、地域に開かれた中核病院として、
これまで以上に重要な役割が求められている。
多くの患者様のニーズに対応しうる最先端の歯科医療の実現に向け、
新たな挑戦と展開≠めざす附属病院について、
斎藤一郎病院長をはじめ、四人の先生方に語っていただいた。

 

 
 

─鶴見大学歯学部附属病院は今、どんな病院をめざすのか。まず病院の理念や運営方針について聞かせて下さい。
斎藤 当院は鶴見大学の建学の精神である「大覚円成」「報恩行持」(人として生まれたことに感謝し、人の役に立てるような毎日を送ること)。この精神を基本理念とし、さらに「質の高い安全な医療」「探究心あふれる医療従事者の育成」「医療技術の開発と向上」「地域医療と福祉への貢献」─という4つの基本方針を掲げて、最新かつ最良の医療に取り組むことといたしました。
今中 この基本理念や基本方針を広く病院スタッフや患者様にも理解・共有してもらおうと、これをパネルにして病院の入り口に掲示しました。

 
 

 
 

─附属病院は「開放型病院」として、地域医療機関との“病診連携”に力を入れています。この分野でも今、新たな展開を考えているそうですね。その前に、開放型病院とは何かについて説明していただけますか。
朝田 開放型病院とは、その名の通り地域に開かれた病院のことです。当院は、平成13年に全国に先駆けて開放型病院の認可を受け、以来、地域で開業する歯科医との連携を密にし、医療協力を推進しています。
 例えば、開業歯科医から紹介された難治患者を受け入れたり、また当院で行う紹介患者様の治療や手術の際に、開業医と共に診療を行っています。あるいは医療情報の交換なども積極的に行い、こうした形の“病診連携”は、特にインプラント科で活発です。
─開放型病院としての附属病院が、今取り組んでいる新たな展開とはどのようなものですか。
斎藤 全国に先駆けて実施した開放型病院の試みでしたが、最近はいろいろ問題点が出てきました。 例えば、地域の歯科医師会を中心に「大学病院の敷居が高過ぎて、十分な利用ができない」といった声があり、一部に開放型病院としてのシステムに形骸化が生じていることも事実です。
 そこで、システム全体を見直し、開放型病院の原点に立ち返って、医療連携の充実・強化を図ることになりました。今は地域の歯科医師会などと協議しながら、新しいシステムづくりを進めています。

 
 

 
 

─新たなシステムとはどのようなものですか。
今中 開放型として、附属病院の医療施設や医療機器の共同利用を提案してきましたが、これらの医療機器類を地域の開業歯科医の先生が活用する環境づくりが十分とは言えませんでした。
 その反省から、医療機器情報の提供システムや、開業医の先生からのいろいろなリクエストを受けるためのシステムを早急に構築しようと考えています。
斎藤 もう一つは、高齢者や障害のある患者様の積極的な受け入れです。高齢化時代がますます進み、これからは超高齢だったり、心身に障害があるため、開業歯科医では治療が難しい受診者が増えてきます。そこで、そうした患者様を附属病院で受け入れ、治療を行います。幸い、当院にはCTやMRIといった最新鋭の先端医療機器が完備しておりますので、患者様の診断や治療にも対応可能です。こうした形で、開放型病院としての病診連携をより強化するつもりです。
今中 さらに、これからは病診連携の一つとして、学術面での連携・交流も必要でしょう。例えば、附属病院では医療セミナーや勉強会が頻繁に開かれています。こうした学術的な催しに、地域で開業する歯科医にも積極的に参加してもらう。あるいは医療講演会を当院と地域歯科医師会で共催し、病院、開業歯科医双方のスキルアップを図ることなども考えています。
 そして、できれば歯科医だけでなく、地域の医師会や薬剤師会などとも連携の輪を広げていきたいと思います。
斎藤 これからは、われわれ附属病院側が様々な医療情報を地域に向かってどんどん発信していく。そのような地域に根差した附属病院でありたいと願っています。

 
 

 
 

─電子カルテの導入など、設備面の充実にも力を注いでいるそうですね。
斎藤 電子カルテは、医療の質の向上からも、これからの時代にはなくてはならないものです。カルテが電子化されれば、患者様の過去から現在に至る治療歴や各種の検査データなど、必要な情報が瞬時にしてパソコンの画面上に表示され、とても便利です。また、膨大な量の紙情報が不要になり、患者情報の一元的な管理が可能になります。
 紙情報だと紛失などの恐れがありますが、電子カルテになれば、そのような心配もなくなり、患者情報の保護にも役立ちます。
 もう一つ、電子カルテには病院での待ち時間の短縮という、大きなメリットがあります。附属病院には1日千人近い外来患者様に来院して頂いており、その混雑は大変なものです。診療費の支払いなどで、長時間お待たせすることは珍しくありません。しかし、電子カルテの導入により、会計等待ち時間の大幅短縮が可能になり、患者サービスの改善につながります。
 電子カルテは時代の要請でもあり、現在、早期導入に向けて着々と準備を進めているところです。

 
 

 
 

─多くの外来患者を診療する附属病院にとって、患者サービスの向上も重要課題の一つです。この面では、どのような改革に取り組んでいますか。
今中 まず先月から、病院長と臨床協議会の構成メンバーが中心になり、受付案内のサービスを始めました。毎朝メンバーが交代で、病院1階の玄関ロビーに立ち、外来患者様の案内係をつとめます。
 私も先日立ちましたが、高齢の女性患者様から「あらっ、先生も案内役をなさるんですか。恐縮です」と、大いに感謝されてしまいました(笑)。これまでにも、協議会にて特に「朝の挨拶」活動にも取り組んで来ましたが、やはり知らない方に挨拶するのが苦手でした。この受付案内を始めてからは、廊下や階段で初対面の外来患者様とすれ違う際には、ご挨拶をさせて頂けるようになりました。そんな自分自身に本当に驚いています。(笑)
斎藤 私もこの間、受付案内に立ちました。病院入口で外来患者様に挨拶し、いろいろ話をしていると、「今まさに病院業務に携わっているんだ」との実感が強く湧き、とても新鮮な気持ちでした。
 病院の医療従事者は診察室や研究室にこもっていてはダメなんです。積極的に現場に出て患者様と触れ合い、生の声を聴くこと。そうして医師自身が変わっていくことが病院の活性化につながると、私は思っています。

 
 

案内に立つ小児歯科 井出医局長

 
 

 
 

─患者サービスの一環として、病院紹介のリーフレットの発行も計画しているそうですね。
今中 病院紹介なら、既に病院のホームページなどで実施しています。ただ、それとは別に患者様に直接、手に取っていただく物も必要だろうと、リーフレットの発行を計画しました。専門外来をはじめ、数多い各診療科の詳細が一目で分かるようなリーフレットを年に4回程度、発行したいと考えています。
 それと待合室の外来患者様を対象にした「健康管理セミナー」。口腔内の清掃や入れ歯の上手な使い方など、主に歯の健康をテーマにしたものや、メタボ対策等、全身の健康をテーマにした、1回20分程度のミニセミナーを病院1階のフロアで定期的に開催していきます。先月末に開いた1回目のセミナーは大好評でした。
斎藤 これも開放型病院としての当院ならではの催しです。こうした催しをどんどん企画し、地域に根差し、市民に親しまれる病院をめざしたいと思います。

 
 

 
 

─患者サービスの向上という点で、朝田先生はいかがですか。
朝田 私は図書館長も兼ねている関係で、外来患者様などを対象に、病院1階のフロアで、図書の配布サービスを実施しています。
 年数回の患者サービスですが、毎回、歴史書や小説など多彩なジャンルの図書を300冊くらい用意して、「ご自由にお持ち帰り下さい」と、無料で提供しています。
 特に年配の方は、このサービスを非常に楽しみにしているようです。
 それと患者サービスの一つとして、病院の医師たちのプロフィール紹介も計画しています。当院には専門医や認定医など、いろいろな資格を持っている医師がたくさんいます。
 そうした情報を含め、医師のプロフィールを病院1階のフロアに掲示します。
そうすることで、患者様側は自分の担当医がどんな先生なのか、がよく分かり、親近感や信頼感が増すはずです。
 昨今は医師と患者様の距離が遠いとも言われていますし、双方の絆を深める上でも、こうした試みは有効だと思います。

 
 

 
 

─ところで、附属病院で歯科衛生士は、どのような仕事をなさっていますか。
岡部 歯科衛生士として、口腔内の健康管理に携わっています。例えば、小さいお子さんの虫歯の予防から高齢者の咀嚼嚥下まで、様々な年代の患者様の健康管理に気を配り、また口腔衛生の構築にも関わっています。
─鶴見大学の短大部には3年制の歯科衛生科があります。ここの学生が2年生になると、附属病院などでの臨床実習がありますね。
岡部 附属病院は大学の同じキャンパス内にあり、歯科衛生科の学生の臨床実習については、質の高い実習が受けられるように、病院が全面的にバックアップします。
 こうした実習の成果もあって、歯科衛生士国家試験においては高い合格率を維持しています。さらに、病院実習により得られた技術力は各方面で確かな信頼を得ており、毎年たくさんの求人をいただいているようです。
 また現在、歯科衛生士は実務経験を積み、高度な専門知識を併せ持つ認定歯科衛生士の資格を取得することも出来ます。
 歯科衛生士をめざすなら、ぜひ鶴見大学へ。私は自信をもっておススメします。
─附属病院は優秀な歯科医を育成するため、歯学部の学生の臨床実習に力を入れ、これが鶴見大学の大きな特色になっています。
斎藤 歯学部の学生は5年次に、附属病院で参加型の臨床実習を行います。
 優秀な医療スタッフがそろった当院での臨床実習は大変に内容が濃く、他の歯科大学の追随を許しません。
 最近は国家試験の勉強により多くの時間を割くため、臨床実習よりも国試対策に重きを移す歯科大学もありますが、鶴見大学はこれまで通り、臨床実習にも力を入れ、優秀な歯科医の育成に全力を注ぎます。

 
 

 
 

─最後に、附属病院がめざす方向を、受験生にメッセージとしてお願いします。
斎藤 当院にはさまざまな専門外来をはじめ、インプラント科、補綴科など幅広い診療科目があり、最新鋭の医療機器も完備しています。これらを活かし、今後は地域に開かれた中核歯科病院として、先端的な専門医療に特化していく。それが附属病院に課せられた大きな使命と考えています。
 また、最近は歯科医学離れが進み、受験生の間に歯学部を敬遠する傾向が見られます。しかし歯科医学のフィールドは広く多様で、奥が深く、実に魅力的な世界です。
 「あなたのなりたいを、歯科医学で見つけて下さい」。これは私立歯科大学協会が受験生に向けたメッセージですが、ぜひ多くの受験生が本学歯学部をめざして欲しいものです。

 

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