UNCHR・鶴見大学共同プロジェクト 庇護希望者のための歯科診療

 

 
 

●UNCHRからの要請を受けて

 
 

 現在も世界のどこかで天変地異や戦争、紛争が起こり、家族や住む場所や仕事を失った人々が安全に暮らせる場所を求めて、他の国へ移り住もうとしている。こうした難民は日本にも多く見られるようになった。日本の政府もこれらの人々を難民として認定し、認定を受けられた難民に対しては手厚いサポートを行っているが、その数は一部に過ぎず、国内にはまだ多くの難民申請を行っている庇護希望者がおり、彼らに対しては生活や医療の援助はほとんどなく、暮らしに窮しており、もちろん歯科診療を受ける術もない。このような現状に対してUNCHR(国連難民高等弁務官事務所)やNGO団体から要請を受け、本学とUNCHRが連携し、わが国の医療系大学初めての取り組みとして本学歯学部附属病院で無償の支援歯科診療を行っている。

 
 

●大学全体が一丸となって対応

 
 

 UNCHRの担当者から現在このプロジェクトの統括をしている永坂哲助教に庇護希望者の歯科診療の要請があったのは去年の2月。全面的に無償で診療を行うということに対する大学側の理解と、患者が病院に診察に訪れるまでのシステムづくりを進めながら、7月に大学とUNCHRの代表者の話し合いが行われ、徐々にプログラムが具体化され、本年2月23日に正式にプロジェクトがスタートした。
 「個人的な対応や賛同した一部のスタッフだけの取り組みでは、対処できないプロジェクトなので、斎藤病院長をはじめ多くの先生方、スタッフの方にご理解をいただき進められたことが、プロジェクトの順調な進行につながっています。ご寄付によるご支援をくださっている協賛企業の存在も、プロジェクト推進の物心両面における大きな支えとなっています」と永坂助教。現在、新患は毎週木曜日に受付、再診は一般と同じように担当医と患者の相談により決められ、保険の適用範囲での歯科診療が無償で行われている。5月までの2カ月半でネパール、バングラデシュ、ミャンマー、トルコ、コートジボワール、アンゴラ、ジンバブエ、コロンビアの8カ国、9名の患者の診療を行い、1名の診療が終了した。「予想よりも人数が少ないのは、潜在的な歯科診療希望者が多くても、庇護希望者として該当するかの審査に時間がかかったり、NGO団体に依頼している居住地からの付き添いや居住地からの交通費の捻出など、いろいろな問題があるようです」。と永坂助教は課題を考える。

 
 

●全国の大学へ発信したい

 
 

 困っている人にできる限りの医療を提供するというのが、大学病院の大前提である。しかし、こうしたプロジェクトを大学病院として取り組むのは予算的にもスタッフ面でもなかなか難しく、二の足を踏むケースも少なくはない。「受け入れ先のない困っている患者を救うことは、他者に対する思いやりの心を顧み、人として生を受けた因縁を感謝し、生物、自然との共生に努めなければならないという曹洞宗の教えに基づいた本学の建学の精神そのものであり、このプロジェクトも本学だからこそできたのではないでしょうか。そして、将来はこのような取り組みを本学から発信して全国の29の歯科大学に広げていきたいと考えています」。このプロジェクトを積極的に推進してきた斎藤病院長はさらなる抱負を語った。

 
 

斎藤一郎病院長(右)と永坂 哲助教

斎藤一郎病院長(右)と永坂 哲助教

 

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